Pythonの基本文法マスターガイド
Pythonは、その読みやすい構文と強力な機能性から、世界中で最も人気のあるプログラミング言語の一つです。初心者からプロフェッショナルまで、幅広い層に利用されており、Web開発、データサイエンス、機械学習、自動化など、多岐にわたる分野で活躍しています。このガイドでは、Pythonの基本的な文法要素である変数、条件分岐(if文)、繰り返し処理(for文)を中心に、その使い方を丁寧に解説します。
変数:データの入れ物
プログラムを記述する上で、データを一時的に保存したり、後で参照したりするために「変数」は不可欠な要素です。Pythonでは、特別な宣言なしに、値を代入するだけで変数が作成されます。
変数の作成と代入
変数は、変数名と値を=(代入演算子)で結びつけることで作成されます。
名前 = "山田太郎"
年齢 = 30
身長 = 1.75
独身 = True
この例では、「名前」という変数に文字列「山田太郎」が、「年齢」という変数に整数30が、といったように、それぞれ異なる型のデータが代入されています。Pythonは、代入された値の型を自動的に判断するため、C言語やJavaのような明示的な型宣言は必要ありません。
変数名のルール
変数名にはいくつかのルールがあります。
- 英字(大文字・小文字)、数字、アンダースコア(_)を使用できます。
- 数字で始めることはできません。
- Pythonの予約語(
if,for,while,defなど)は変数名として使用できません。 - 大文字と小文字は区別されます(例:
MyVariableとmyvariableは別の変数として扱われます)。
データ型
Pythonは、様々なデータ型を扱えます。代表的なものには以下のようなものがあります。
- 整数型 (int):例 1, 100, -5
- 浮動小数点数型 (float):例 3.14, -0.5, 1.0
- 文字列型 (str):例 “Hello”, ‘Python’
- 真偽値型 (bool):
TrueまたはFalse - リスト型 (list):複数の要素を順序付けて格納(例:[1, 2, 3], [“apple”, “banana”])
- タプル型 (tuple):リストと似ていますが、一度作成すると変更できません(例:(1, 2, 3))
- 辞書型 (dict):キーと値のペアでデータを格納(例:{“name”: “Alice”, “age”: 25})
type()関数を使うことで、変数のデータ型を確認できます。
print(type(年齢)) # 出力:
print(type(身長)) # 出力:
print(type(名前)) # 出力:
条件分岐(if文):プログラムの流れを制御する
プログラムでは、特定の条件が満たされた場合にのみ実行したい処理や、条件によって異なる処理を実行したい場合があります。このような制御を実現するのが「if文」です。
if文の基本構造
if文は、ifキーワード、条件式、コロン(:)、そしてインデントされたブロック(処理内容)で構成されます。
if 条件式:
# 条件式がTrueの場合に実行される処理
処理1
処理2
条件式には、比較演算子(==: 等しい, !=: 等しくない, <: より小さい, >: より大きい, <=: 以下, >=: 以上)や論理演算子(and: かつ, or: または, not: ではない)などを用います。
if-else文
条件が真の場合と偽の場合で異なる処理を行いたい場合は、else節を追加します。
if 条件式:
# 条件式がTrueの場合に実行される処理
処理A
else:
# 条件式がFalseの場合に実行される処理
処理B
if-elif-else文
複数の条件を順番に評価したい場合は、elif(else ifの略)を使用します。
if 条件1:
# 条件1がTrueの場合に実行される処理
処理A
elif 条件2:
# 条件1がFalseで、条件2がTrueの場合に実行される処理
処理B
elif 条件3:
# 条件1、条件2がFalseで、条件3がTrueの場合に実行される処理
処理C
else:
# 上記どの条件もTrueでない場合に実行される処理
処理D
例:
点数 = 85
if 点数 >= 90:
print("成績はSです。")
elif 点数 >= 80:
print("成績はAです。")
elif 点数 >= 70:
print("成績はBです。")
else:
print("成績はCです。")
# 出力: 成績はAです。
繰り返し処理(for文):同じ処理を何度も実行する
同じような処理を複数回繰り返したい場合に「for文」が役立ちます。Pythonのfor文は、主にシーケンス(リスト、タプル、文字列など)の各要素に対して処理を繰り返すために使われます。
for文の基本構造
for文は、forキーワード、ループ変数、inキーワード、イテラブル(繰り返し可能なオブジェクト)、コロン(:)、そしてインデントされたブロックで構成されます。
for ループ変数 in イテラブル:
# イテラブルの各要素に対して実行される処理
処理1
処理2
例:
果物リスト = ["りんご", "バナナ", "みかん"]
for 果物 in 果物リスト:
print(f"私は{果物}が好きです。")
# 出力:
# 私はりんごが好きです。
# 私はバナナが好きです。
# 私はみかんが好きです。
range()関数との組み合わせ
一定回数処理を繰り返したい場合、range()関数とfor文を組み合わせるのが一般的です。range(n)は0からn-1までの整数を生成します。
for i in range(5):
print(f"{i}回目の繰り返しです。")
# 出力:
# 0回目の繰り返しです。
# 1回目の繰り返しです。
# 2回目の繰り返しです。
# 3回目の繰り返しです。
# 4回目の繰り返しです。
range()関数は、開始値と終了値、ステップ(増分)を指定することもできます。
# 2から10まで、2ずつ増やす
for i in range(2, 11, 2):
print(i)
# 出力: 2 4 6 8 10
# 10から1まで、1ずつ減らす
for i in range(10, 0, -1):
print(i)
# 出力: 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
まとめ
Pythonの基本文法である変数、if文、for文は、プログラムの根幹をなす要素です。変数はデータを保持する器であり、if文は条件に応じてプログラムの動作を分岐させ、for文は繰り返し処理を実現します。これらの文法を理解し、使いこなすことは、より複雑で実用的なプログラムを記述するための第一歩となります。
さらに、Pythonにはwhile文による別の形式の繰り返し処理や、関数(def)による処理のまとまり、クラス(class)によるオブジェクト指向プログラミングなど、さらに多くの強力な機能が用意されています。これらの基本をしっかりとマスターした上で、他の機能へと学習を進めていくことで、Pythonプログラマーとしてのスキルを効率的に高めていくことができるでしょう。
