Jupyter Notebookを効率的に使うためのショートカット

プログラミング

Jupyter Notebook 効率的活用術

Jupyter Notebook は、インタラクティブなコード実行とドキュメント作成を同時に行える強力なツールです。その真価を発揮させるためには、キーボードショートカットを習得することが不可欠です。本稿では、Jupyter Notebook をより効率的に使いこなすためのショートカットキーと、それらを活用するためのヒントを網羅的に解説します。

コマンドモードと編集モード

Jupyter Notebook のショートカットキーは、大きく分けて コマンドモード と 編集モード の2つのモードで機能が異なります。

コマンドモード

コマンドモードは、セルの操作(追加、削除、コピー、貼り付けなど)やセルの種類の変更など、ノートブック全体を管理するためのモードです。セルの左側に青い線が表示されている状態がコマンドモードです。コマンドモードに入るには、Esc キーを押します。

編集モード

編集モードは、コードやテキストを実際に記述・編集するためのモードです。セルの左側に緑色の線が表示されている状態が編集モードです。編集モードに入るには、Enter キーを押すか、マウスでセルをクリックします。

コマンドモードでの主要ショートカット

コマンドモードで頻繁に使用するショートカットキーを以下に示します。

セルの操作

  • A: 上に新しいセルを挿入
  • B: 下に新しいセルを挿入
  • D, D (Dを2回連続で押す): 現在のセルを削除
  • C: 現在のセルをコピー
  • V: コピーしたセルを現在のセルの下に貼り付け
  • X: 現在のセルを切り取り(カット)
  • M: 現在のセルをMarkdownセルに変更
  • Y: 現在のセルをコードセルに変更
  • Z: 直前の操作を取り消す
  • Shift + M: 選択した複数のセルを結合

セルの移動

  • Shift + ↑: 現在のセルを上に移動(複数選択時も有効)
  • Shift + ↓: 現在のセルを下に移動(複数選択時も有効)

複数セル選択

  • Shift + ↑: 上のセルを選択に追加(コマンドモードで)
  • Shift + ↓: 下のセルを選択に追加(コマンドモードで)
  • C, V, X, D D などの操作は、複数選択したセルに対して一括で実行できます。

その他のコマンドモードショートカット

  • Ctrl + Enter: 現在のセルを実行し、選択を維持
  • Shift + Enter: 現在のセルを実行し、下のセルへ移動(または新しいセルを作成)
  • Alt + Enter: 現在のセルを実行し、下に新しいセルを挿入
  • P: コマンドパレットを開く(様々なコマンドを検索・実行可能)
  • L: 現在のセルに行番号を表示/非表示
  • Shift + L: 全てのセルに行番号を表示/非表示

編集モードでの主要ショートカット

編集モードでは、テキストエディタと同様のショートカットキーが利用できます。

カーソル移動

  • Home: 行の先頭に移動
  • End: 行の末尾に移動
  • Ctrl + ←: 単語単位で左に移動
  • Ctrl + →: 単語単位で右に移動
  • Ctrl + Home: ドキュメントの先頭に移動
  • Ctrl + End: ドキュメントの末尾に移動

テキスト選択・編集

  • Shift + ← / →: 文字単位で選択
  • Shift + ↑ / ↓: 行単位で選択
  • Ctrl + Shift + ← / →: 単語単位で選択
  • Ctrl + A: 全て選択
  • Ctrl + C: コピー
  • Ctrl + V: 貼り付け
  • Ctrl + X: 切り取り
  • Ctrl + Z: 取り消し
  • Ctrl + Y: やり直し
  • Ctrl + D: 現在の行を削除
  • Ctrl + Shift + K: 現在の行を削除(環境による)
  • Tab: コード補完(インテリセンス)
  • Shift + Tab: 関数のヘルプを表示

コメントアウト

  • Ctrl + / (スラッシュ): 現在の行または選択範囲のコメントアウト/コメント解除

高度な活用テクニック

コード補完とヘルプの活用

編集モードでコードを入力中に Tab キーを押すと、関数名や変数名などの候補が表示されます。これにより、タイピングミスを減らし、コードの記述速度を向上させることができます。また、関数名などの後に Shift + Tab を押すと、その関数のドキュメンテーション(引数、説明など)が表示され、コードの理解や利用に役立ちます。複数回 Shift + Tab を押すことで、より詳細なヘルプ情報を表示することも可能です。

マジックコマンドの活用

Jupyter Notebook には、Python の標準機能とは異なる便利な機能を提供する「マジックコマンド」があります。これらは % または %% で始まります。

  • %run: 他のPythonスクリプトを実行
  • %time: コードの実行時間を計測
  • %whos: 現在定義されている変数の一覧を表示
  • %%writefile: コードをファイルに書き出す
  • %%html: HTMLを直接記述
  • %%latex: LaTeX数式を直接記述

マジックコマンドを知ることで、デバッグ、パフォーマンス計測、出力形式の変更などが容易になります。コマンドパレット (P) からもマジックコマンドを検索できます。

ショートカットキーのカスタマイズ

Jupyter Notebook では、ユーザーがショートカットキーをカスタマイズすることも可能です。通常、設定ファイル (custom.js) を編集することで行いますが、より簡単な方法として、Nbextensions のような拡張機能を利用することもできます。

Markdown の活用

コードだけでなく、説明文や考察を記述するために Markdown セルを積極的に利用しましょう。見出し、リスト、強調、リンク、画像などを Markdown で記述することで、ノートブックがより分かりやすく、読みやすいドキュメントになります。コマンドモードで M を押して Markdown セルに切り替え、数式は LaTeX 形式で記述できます。

まとめ

Jupyter Notebook のショートカットキーを習得することは、Python によるデータ分析や機械学習のワークフローを劇的に効率化します。コマンドモードと編集モードの使い分けを意識し、よく使うショートカットを体に染み込ませることが重要です。今回紹介したショートカット以外にも、Jupyter Notebook には多くの便利な機能があります。コマンドパレット (P) を活用して、新たなショートカットや機能を発見し、ご自身の開発スタイルに合わせてカスタマイズしていくことで、Jupyter Notebook を最大限に活用できるようになるでしょう。